サルフェートフリーって何? ウワサのウソと本当

植物由来のボタニカルシャンプーを選ぶ際には、よく「サルフェートフリー」というキーワードに注目が集まります。


サルフェートとは、シャンプーの洗浄剤に含まれることの多い「硫酸(りゅうさん)系化合物」(具体的には硫酸塩)を指します。

ですから、サルフェートフリーとは「硫酸系化合物を含まないシャンプー」のことです。


しかし、サルフェートフリーについては、一般にあまり詳しい情報や正しい情報が紹介されていないようです。たしかに化学式や専門用語が並ぶ解説を読んでも、何のことだかわかりませんよね!?


そこで、サルフェートフリーに関してまことしやかに語られているウワサのウソ・本当を確かめてみました。


サルフェートって有害物質なの?


答えはNoです。

硫酸塩はマグネシウムなどのミネラルと硫酸基が結び付いた物質で、ミネラルウォーターや野菜のなかにも、そして私たちの体のなかにも含まれています。

サルフェートにはデトックス効果のほか、お通じを良くする働きや利尿作用があるとされていて、体に有害な物質とは言えません。

ただし、どんな物質も「量」が大切です。サルフェートを摂取しすぎると下痢などになる可能性があります。


サルフェートが髪や地肌につくと有害なの?


これもNoです。

人体に有害ならばシャンプーなどで使用が認められているわけはありません。

サルフェートは医薬品や歯磨き粉、ボディーソープ、リキッドファンデーションなどにも使われることがあります。つまり、安全だと広く認められている成分といって問題はないでしょう。


それなら、サルフェート入りのシャンプーを使ってもいいのでは?


いよいよここからが本題です。

ここから少しわかりにくくなってしまうのが「サルフェートフリー」のシャンプーにまつわる謎の原因です。そのためにいろんなウワサや誤解を生んでしまうのですね。

ですから、できるだけかみ砕いて説明してみようと思います。


「硫酸」という名前が誤解を生む


「硫酸系化合物」「硫酸塩」。こう漢字で書くと、「硫酸」という文字が怖いですよね。

硫酸というと、一般的には「怖い化学薬品で、皮膚についたら少量でもヤケドをしてしまう」というイメージがあります。


でも、硫酸塩なら話は別です。上で説明したように、ミネラルウォーターや食品にも含まれる安定した物質です。

ところが、「硫酸」という字を見ただけで「なんだか怖そう……」「硫酸の仲間なら髪にいいワケない!」と思い込んでしまう人もいるのです。


逆に、業者のなかにも、サルフェートフリーのシャンプーを宣伝したいために、サルフェートを「とても体に有害なもの」のように煽り立てる悪質なケースもみられます。


「それでも硫酸と名前がつくのは怖い」というのは、「活性酸素は体に有害だから、普通の酸素も体に悪いんでしょ?」というのと同じ理屈です。言葉のイメージや煽りにごまかされないようにしたいですね。


実際のところ、サルフェート入りシャンプーのデメリットは?


シャンプーで汎用される「硫酸系界面活性剤」も、サルフェートの一種です。

硫酸系界面活性剤(サルフェート系洗浄剤)は、広く使用されているため、とても安価です。泡立ちがよく、汚れを落とす力も高いというメリットがあります。


ただし、サルフェート系洗浄剤は汚れを落とす力が強いぶん、皮膚に与える刺激も強いのですね。

そして皮脂を取り除く力が強いので、皮膚に炎症を起こす可能性が(サルフェートフリーのシャンプーに比べて)高いのです。特に、目に入った場合は大量の水で洗浄しなくてはなりません。


このため敏感肌の人や、シャンプーする頻度の高い人が長期間サルフェート系洗浄剤入りシャンプーを使い続けた場合、髪や地肌のトラブル、お肌(顔・首や手など)全般のトラブルに結び付く可能性が考えられます。


つまり「サルフェート系は有害とまでは言えないけれど、肌や髪への健康意識・美意識が高い人や、特に敏感肌の人、肌・髪にトラブルを抱えている人には、サルフェートフリーに比べるとお勧めしにくい」ということなのです。



じゃあ、サルフェートフリーのシャンプーはいいシャンプー?


これも、残念ながらNoです。

もちろん、サルフェートフリーであることは皮膚への刺激が強すぎないという意味でいいことです。

でもそれは「髪や地肌に刺激の強い成分のひとつが入っていない」ということでしかありません。

そのほかに有害な成分や、あなたの体質・髪質にあわない成分が含まれていれば、いくらサルフェートフリーであっても「いいシャンプー」とはいえません。


また、最近それなりにヒットしているシャンプーのなかにも「まやかしのサルフェートフリー」が多くみられます。

それは、たとえば「オレフィンスルホン酸Na(通称:オレフィン)」などを使った製品などです。


オレフィンは、刺激性の強いラウリル硫酸Naやラウレス硫酸Naの代替成分として使われるようになった成分なのですが、これはサルフェートではないものの、肌への刺激性はラウレス硫酸Naなどとあまり変わらないのです。


あなたにとっていいシャンプーとは、あなたの体質や髪質に合っていて、ライフスタイルや価値観にもふさわしい、ずっと使い続けられるシャンプーのことのはずです。

「サルフェートフリーだからいいシャンプー」という思い込みは危険です。そのほかの成分であっても、「それは本当に髪や肌にやさしい成分なの?」という問題意識を持ってシャンプーを選んでくださいね。


そして、たとえば

  • 「極限まで人工成分を少なくしたシャンプー」
  • 「自分の理想の洗い上がりに近いシャンプー」
  • 「植物由来のパワーを体に取り入れられるシャンプー」

など、自分なりの基準を決めてシャンプーを選ぶことも大切ではないでしょうか。